東京未来大学BookLinkのオフィシャルブログがついに誕生
ビブリオ(=本)を媒介にしてビブリア(=本を読む人)をLink(=つなげる)させるという本懐を遂げるべく、ビブリオバトルという本のプレゼン大会を主な活動に据えているこの集団。ついに校外での活動に着手し始めました
非公認サークルのくせに学長先生までメンバーとして巻き込んでいる我々の動向を、皆様にお届けします󾬆︎

プレイ・ザ・ボルグ

最近ブログを書くにあたって
お題をいただいています。

紹介される本の傾向だとか
Book Linkの組織構成というお題をもらっていました。
今回は「珍しい本」

というわけで私の好きな本の中で
タイトルで検索しても
全く引っかからなかった本を一冊
ご紹介します。

「プレイ・ザ・ボルグ」という本です。

その筋の人は「あー」ってなります。
でも、知らない人はおそらく
タイトルだけでは本のジャンルさえわからないでしょう。

この本は「テニスの入門書」です。

父の本棚に入っていたこの本は
テニスを始めたばかりの私が手に取った
初めての入門書でした。

ビヨン・ボルグという
テニスプレーヤーが
初めてテニスをする人に向けて書いた本です。
私はこの本以上に
素人の中でも「何かするにあたってまずは入門書を手に取るようなタイプの人」に教える。ということを考えた一冊を知りません。

まず序章でこう述べます。
「まずはじめに『テニスとはこうすべきだというものは一切無い』そうした教え方をする本なんか全部嘘っぱちだ。君のテニスのスタイルも見ずに『こうすべきだ』と教えるなんて本当に馬鹿げている」
と。


そして、一番最初のレッスンは
「良いから、とりあえず壁に向かって打ってみろ」
多くはの本はラケットの持ち方じゃないですか。テニスは持ち方だけでもいくつか種類があって、その中でスタンダードなのは……ってのがよくあるパターンですが。
違うんです。「まず打て、話はそれからだ」

次が

「自己流こそベスト」
本としては
ここで、勝手に自己流とかやらせたら!
あとの段取りとか!
わかんなくなるじゃないですか!

でも、この本の前提でありスタンスは

「いいから、自分なりにやってみろ。で、その中で良いと思う打ち方があったら、もう一回それが出来るように何度もまずはやってみること。何度も言うけど『こうすべきだ』なんてものはない」なんです。

その上で「トップスピンってのがあるけど、あれはラケットを下から上に振って打つんだ。それだけでちゃんと回転がかかる」

「サーブの練習は……まずはちょっとラケット置いて。それから、ボールを普通に持って相手のコートに投げる。そうそう、そんな感じで打ってごらん」
こんな調子でレッスンは続きます。

先ほども言いましたがテニスは、ラケットの持ち方一つでも種類があります。
ボルグさん自身も「ホッケーからテニスに移ったからラケットが変な持ち方になっている。僕はこれが打ちやすいけど、僕がやってるからという理由なら真似しない方が良い」と言います。

この本は
「僕のやり方を押しつけるつもりは一切無い。テニスは技術を覚えないと出来ないような、そんな難しいもんじゃないんだ」
というスタンスを
最初から最後まで貫き通します。
ここまで素人を信頼している入門書は
なかなか類を見ないと思います。

なによりも「テニスをする才能がない」なんて思わせない。そんな熱意が伝わってきます。

おそらく二度と巡り会わない。
珍しい一冊です。